2018910

声 明

周産期母子医療センターにおける医師の働き方改革について

                      全国周産期医療(MFICU)連絡協議会

 全国周産期医療(MFICU)連絡協議会は地域における周産期医療を支える高次医療機関である総合周産期母子医療センターおよび地域周産期母子医療センターに指定された施設で勤務している産婦人科医で構成される団体です。日本の周産期医療のレベルは他国に比較して群を抜いて高い水準にありますが、それを支えているのが、救急搬送される重症な妊産婦さんに24時間体制で対応する周産期母子医療センターです。周産期母子医療センターの産婦人科医は、時間外労働、当直回数のいずれにおいても、他の診療科と比べ極めて厳しい労働条件で勤務せざるを得ないのが実情です。

 現在、「医師の働き方改革」の検討が進められていますが、私たちは、労働基準法を初めとする法令を遵守し、常態化している長時間勤務を改善することこそが、安全で質の高い周産期医療を提供し続けるために必要不可欠と考えています。そのためには周産期母子医療センターでは16名以上の常勤産婦人科医師が必要になります。(現状ではこの条件を満たす総合周産期母子医療センターは38%、地域周産期母子医療センターは7%に過ぎません1))。

 産婦人科医という人的資源は限られており、短期間でそれを大幅に増やすことは事実上不可能です。そうした現実を前提として、働き方改革を実現するためには、地域の産科医療体制の大きな変革が必要です。私たちは、安全で、より良い周産期医療を継続的に提供するために、自らの働き方改革を実現していくことを宣言します。そして、そのための具体的方策として、以下のような施策を提言します。

 

l  周産期母子医療センターの大規模化・重点化

Ø  地域の公的病院全体を対象とする、分娩室機能の統合を含む産科医療体制の再編成
限られた産婦人科医で地域の産科医療における24時間体制を維持するためには、地域の公的病院全体を対象とした分娩室機能の統合を含む産科医療体制の再編成を行い、時間外診療に従事する医師の効率的な配置を推進する必要があります。

Ø  現場の産婦人科医が働き続けることを可能にするための勤務条件の改善
周産期母子医療センターが24時間即時対応可能な診療体制を維持するためには、常勤医枠の大幅拡大、女性医師が多数派となっている産婦人科医の継続的就労を確保するための勤務形態の多様化、処遇の改善、施設間・地域間の連携・支援体制の構築、病児保育・夜間保育を含む院内保育体制の整備等、考えられるあらゆる方策を尽くすことによって勤務条件を改善し、地域の周産期医療の現場で産婦人科医が働き続けることができる体制を整備する必要があります。

l  周産期医療の質的向上を目指した他の診療科及び多職種の協働によるチーム医療の推進

  質の高い周産期医療を確保し、その向上をはかるためには、以下のような方策を推進する必要があります。

Ø  新生児科医、麻酔科医の増員と周産期医療への積極的関与

Ø  助産師外来・院内助産の推進

Ø  診療アシスタント等の活用を通じた積極的なタスクシフト

 

 ここで述べた内容は、将来にわたって地域の産科医療を守るためにどうしても必要な措置です。このような対応は地域の妊産婦さんの産科医療へのアクセスを悪化させるように思われるかもしれませんが、地域で安全にお産ができる環境を確保するためには必要不可欠であることをご理解いただければと存じます。

 

1)     周産期医療の現場と「働き方改革」〜施設情報調査2017年より〜 日本産婦人科医会記者懇談会 201711

      





熊本を中心とする九州地震に対し
下記のマニュアルをご活用ください


 妊産婦を守る情報共有マニュアル(一般・避難所運営者向け)
  → ダウンロード

 災害時妊産婦情報共有マニュアル(保険・医療関係者向け)
  → ダウンロード

 




被災者・被災地向け情報

災害時における乳幼児栄養

乳幼児をお持ちのお母さんへ

 




声 明 文

高次周産期母体・胎児医療を担う医師の立場から、今回の東日本大震災に関して、
以下の声明を出させていただきます。  

 今回の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。私たちがこれまで経験したことのない未曾有の大災害で未だにライフラインが断たれている地域が残されています。そのような状況の中での出産に大きな不安を抱えている妊婦さんが多いのではないかと憂慮しています。    

 MFICU(母体・胎児集中治療室)は、周産期母子医療センターにあり、医療スタッフや高度の医療機器が整備されていて、合併症を有する妊産婦さんや早産が予測される妊婦さん(ハイリスク妊産婦)をNICU(新生児集中治療室)や関係する専門スタッフと協力して安全で安心な医療を提供し、母と児の命と健康を守っております。全国MFICU連絡協議会は、全国の周産期医療センターで働いている専門家の集まりです。
 
通常はリスクのない正常な出産は一次診療施設(地域の出産施設)にお願いすることが多いのですが、今回のような状況では、周産期母子医療センターでも、ハイリスク妊産婦さんの診療に加えて、地域で出産や治療を必要としている妊産婦さんを受け入れ、昼夜を問わず母と児の健康を見守っています。  
 
被災地区の先生及び施設におかれましては、困難を極めている状況が続いていると思いますが、一人でも多くの命が救われますようご尽力ください。   
 
さらに、今回被災されていない施設の医師は、自分たちにできる支援はないかと懸命に模索しています。多くの周産期母子医療センターが、被災地からの里帰り出産の早期からの受け入れや東北地方の出産施設への応援などを考えています。  
 
また、不安を抱えた国民の皆様に、適切な情報を提供することも大きな役割の一つと考えています。近々に周産期救急窓口のリストなども準備する予定です。  

 最後に私たち全国MFICU連絡協議会は一丸となって、より多くの母と児の命が守られるよう全力で支援することを表明いたします。    

 

     2011年3月15日  

 

                         全国MFICU連絡協議会代表幹事 杉本充弘   



第13回 MFICU連絡協議会
2009年7月13日

第45回日本周産期・新生児医学会学術集会に合わせて、第13回MFICU連絡協議会が、
名古屋国際会議場で開催されました。

全国の周産期センター等から86名の産婦人科医が参加し、現在、全国的に問題になっている母体救急対応や輸血用血液配送システムの変更など周産期センター関連事項の情報・意見交換、本連絡協議会の運営や共同研究などの話し合いが行われました。

協議会の様子は、日本テレビ系列の中京テレビが撮影していかれました。




 
平成20年度厚生労働科学特別研究事業

救急部門と周産期部門との連携強化に資する具体的手法に関する研究

(主任研究者:杉本壽 大阪大学医学部救急医学教授)

分担研究者報告

周産期医療と救急医療の確保と連携のための緊急課題への提言

分担研究者:海野信也 北里大学医学部産婦人科学教授

>> 分担研究報告書は、ここをクリック PDF 1.6M 

>> 分担研究報告書の要旨は、ここをクリック PDF 380K


 

福島県立大野病院の医師に無罪判決

いわゆる「大野病院事件」の裁判で、福島地方裁判所は、2008年8月20日、被告の産婦人科医師に無罪判決を言い渡しました。

 


高次周産期産科医療を担う医師からの声明

 

 高次周産期産科医療を担う医師の立場から、福島地方裁判所による福島県立大野病院医師に対する判決に

  関して、以下の声明を出させていただきます。

 

はじめに、亡くなられた患者様に深く哀悼の意を表し、ご家族の皆様には心からお悔やみを申し上げます。


お産や手術に際して、担当した患者様が亡くなられる事は、ご家族と同様に、私たち周産期医療に携わるものにとっても大変残念で悲しい事であり、現代医療の限界を痛感させられるものです。世界に誇れる日本の周産期医療水準は、加藤医師のように地域で誠心誠意医療に邁進している人々によって築かれ支えられたものです。しかしながら、そのような医療現場において最善を尽くし診療に当たったとしても、ある一定の頻度で不幸な出来事が起こることを避けることはできません。このことは、一般の産科医療施設のみならず、3次あるいは2次施設としての総合・地域周産期母子医療センターにおいても同様です。そのため、今回の不幸な出来事が一人の医師個人の責任として問われたこと、また逮捕・起訴にまで至たり、刑事責任を問われたことには疑問を抱かざるを得ません。

 

今回、関係者による慎重な審査の結果、加藤医師がとった医療行為が業務上過失致死の罪には当たらないという判決がでましたが、関係機関の方々の誠意ある判断に深謝いたします。この判決は、癒着胎盤の取り扱いの困難性や、周産期医療に携わる医師が日常的に行っている医療行為には本件のような不測の事態の発生する可能性が常に内在するということが理解されたものと評価いたします。本判決が、加藤医師と同様に厳しい医療環境の中で懸命に医療を担っている医師達が患者を救うという使命感の喪失や意欲の減退に陥ったり、過酷な医療現場を離れたりすることにならないよう、少しでも歯止めになればと期待しております。また、その事は医療の受益者である国民の利益につながるものと考えます。

 

検察庁は本判決を真摯に受け止め、控訴することなく、今回の逮捕、拘留、起訴と長期の裁判が医療現場にもたらした混乱を一日も早く収束するよう強く要望いたします。また本件にて、加藤医師が医師としての貴重な2年半もの年月を奪われたことは加藤医師だけではなく、地域医療にとっても大きなマイナスでありました。私たちは、加藤医師を取り巻く環境と地域医療の一刻も早い復興を希望いたします。

 

最後に、私達は、今後も医学医療の進歩を押し進め、その成果が国民への医療に還元できるよう、周産期医療システムの改善も含めた再発防止に向けた最善の施策を講じるために、国民の皆さん、妊婦さんとそのご家族、医療機関、行政機関のご協力をいただきながら、より多くの母と児の命が守られる社会を目指して努力を続けることを表明いたします。

 

           2008820

          

           全国周産期医療(MFICU)連絡協議会

                  代表  末原 則幸 (大阪府立母子保健総合医療センター  副院長)

 

  私たち会員は、本声明文に署名いたします

                         2008829日現在

        署名者リスト

 

     

 


 
 

第12回 MFICU連絡協議会
2008年7月14日


第44回日本周産期・新生児医学会学術集会に合わせて、第12回MFICU連絡協議会が、
パシフィコ横浜会議センター(横浜)で開催されました。

全国の周産期センターから65名の産婦人科医師が参加し、本連絡協議会の運営、共同
研究、渉外活動などについて活発な話合いがもたれました。
 

 


 

平成19年度 周産期救急体制の実態に関する
緊急調査報告と緊急調査結果に基づく提言

周産期救急体制の問題が重大な社会問題となっている現状を踏まえ、本協議会では、都道府県における周産期救急体制に関する緊急調査を本年9月に実施し、報告書としてまとめました。さらにその結果に基づく提言を行いました。

>> 詳細は、ここをクリック
 


 

第11回 MFICU連絡協議会
2007年7月9日


第43回日本周産期・新生児医学会学術集会に合わせて、第11回MFICU連絡協議会が、
砂防会館(東京)で開催されました。

全国の周産期センターから81名の産婦人科医師が参加し、本連絡協議会としての研究、渉外活動などについての話合いがもたれました。

 

 

 

第10回 MFICU連絡協議会
2006年7月10日


第42回日本周産期・新生児医学会学術集会に合わせて、第10回MFICU連絡協議会が、
ワールドコンベンションセンターサミット(宮崎市)で開催されました。

全国の周産期センターから80名以上の産婦人科医師が参加し、本連絡協議会としての
共同研究や、周産期医療・周産期センターをめぐる諸問題について話し合われました。

 


 

衆議院労働委員会参考人発言
2006年4月25日

奥田美加医師
横浜市立大学附属市民総合医療センター
母子医療センター


 

福島県の県立病院の医師起訴について

     
報道記事  2006年2月18日 帝王切開で出血死、医師逮捕
 


高次周産期産科医療を担う医師からの声明

 

はじめに、亡くなられた患者様とそのご遺族に対して心より哀悼の意を表します。

お産や手術に際して、担当した患者様が亡くなられる事は、ご家族と同様に、私たち周産期医療に携わるものにとっても大変残念で悲しい事であり、現代医療の限界を痛感させられるものです。

さて、福島県の県立病院において帝王切開中の大量出血により患者様が亡くなられた件で、帝王切開術を担当した産科医師が逮捕・起訴されました。この逮捕・起訴につきまして、全国各地域において周産期医療をささえる責務のある高次周産期医療施設の集まりである本会としても、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の共同声明ならびに、新生児医療連絡協議会の声明を強く支持せざるを得ません。

世界に誇れる日本の周産期医療において最善を尽くし診療に当たったとしても、ある一定の頻度で不幸な出来事が起こることを避けることはできません。このことは、一般の産科医療施設のみならず、3次あるいは2次施設としての総合・地域周産期母子医療センターにおいても同様です。今回の不幸な出来事が一人の医師個人の責任として問われたこと、また逮捕・起訴にまで至ったことには疑問を抱かざるを得ません。

さらに今回のことが、近年問題となっている産科を志す医学生の減少、全国的な産科医不足、産科医療施設の閉鎖に一層拍車をかけ、地域の周産期医療が崩壊し、安全で安心なお産ができる地域が激減してしまうのではないかとたいへん危惧しております。

今回の件に対して、適切な医学的見解に基づいた判断により、周産期医療システムの改善も含めた再発防止に向けた最善の施策を講じるために、国民の皆さん、妊婦さんとそのご家族、医療機関、行政機関に最大限のご協力をいただくよう、強く要望致します。

 2006316

    全国周産期医療(MFICU)連絡協議会
      代 表  末原 則幸 (
大阪府立母子保健総合医療センター  産科部長)

私たち会員は、本声明文に署名いたします順不同)

 

青森県立中央病院 総合周産期母子医療センター 母体胎児集中治療部門部長

     佐藤 秀平
岩手医科大学総合周産期母子医療センターMFICU講師

     福島 明宗

仙台赤十字病院 総合周産期母子医療センター 第一産婦人科部長

     谷川原 真吾

宮城県立こども病院 産科医長

     斎藤 創

秋田大学 産婦人科 助教授

     平野 秀人

秋田赤十字病院 周産期医療センター 第二産婦人科部長

     真田 広行

福島県立医科大学 総合周産期母子医療センター 講師
     藤森 敬也

獨協医科大学病院 総合周産期母子医療センター 教授

     渡辺  

自治医科大学 総合周産期母子医療センター 母体胎児集中治療管理部部長

     渡辺 尚

群馬県立小児医療センター 総合周産期母子医療センター 産科部長

     高木 剛

埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 教授

     馬場 一憲

亀田メディカルセンター 周産期母子医療センター長・産科部長

     鈴木 真

東京女子医科大学 産婦人科教授・母子総合医療センター母性部門長

     松田 義雄

日本赤十字社医療センター 産科部長 

     杉本 充弘

神奈川県立こども医療センター 産婦人科部長

     山中 美智子

北里大学産婦人科教授 総合周産期母子医療センター長

     海野 信也

山梨県立中央病院 産婦人科主任医長

     寺本 勝寛

長野県立こども病院 総合周産期母子医療センター 産科部長

     菊池 昭彦

聖隷浜松病院 総合周産期母子医療センター 周産期科部長

     村越 毅

長岡赤十字病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科部長

     須藤 寛人

富山県立中央病院 母子医療センター 部長

     中野    

国立病院機構 長良医療センター 産科医長

     川鰭 市郎

大津赤十字病院 産婦人科部長

     小笹 宏

京都第一赤十字病院 総合周産期母子医療センターセンター長・産婦人科部長

     中田 好則

兵庫県立こども病院周 産期医療センターセンター 所長・産科部長

     大橋正伸

島根県立中央病院 産婦人科部長

     長谷川 明広

倉敷中央病院 産婦人科主任部長

     高橋 晃

県立広島病院 産科部長

     上田 克憲

山口県立総合医療センター 総合周産期母子医療センター センター部長

     佐世 正勝

徳島大学 周産母子センター 講師

     前田 和寿

国立病院機構 香川小児病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科医長

     夫 律子

久留米大学 総合周産期母子医療センター主任

     堀 大蔵

聖マリア母子総合医療センター長  

     河野 勝一

国立病院機構 長崎医療センター 産婦人科部長

     安日 一郎

熊本市熊本市民病院 産婦人科部長

     石松 順嗣

大分県立病院 総合周産期母子医療センター 産科部長

     佐藤 昌司

鹿児島市立病院 産婦人科科長

     上塘 正人

沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター 産科部長

     橋口 幹夫

     

 

 

 

 

 

 

2013年7月15日から